アイデアソン&ハッカソン運営のtipsをちらほらと。今回は会場探しのあれこれ。
ハッカソンの準備で最初に汗をかくのは会場探し。各地で使った施設をいくつか例に挙げ、どのような条件が必要なのか考えてみたいと思います。
1.民間か公設か
だれにどこの会場を貸してもらえるものなのか。これが最初の関門です。ざっくり分類すると、
・自治体などが所有・運営する公的な施設
・貸会議室などの民間の施設
・自社の会議室やホールを提供してくれる企業
・大学や専門学校など
のいずれかになるかと思います。
(1) 自治体などが所有・運営する公的な施設
ここはさらに2つの分類が可能です。
ひとつは、市民に貸し出しを行っている市民センターのような場所。
その自治体の住民や、活動拠点を置いているNPO・団体・企業などに貸し出しをしているので、利用者登録をして、貸し出し手続きを行えば、利用可能です。利用者登録をする際、団体で利用する場合は、団体の活動主旨などを問われることもあるので、ある程度、説明用の文書を用意しておくとスムーズかもしれません。
予約手続きでは、空き状況の確認や予約そのものもWebサイトでできる自治体も多くなってきました。そうでない自治体は、当該施設などに電話で問い合わせをしてみましょう。
また、一般のあらゆる市民活動で利用されるため、必ずしもITイベント向きではない点に注意です。そうした施設は、利用時間、飲食の可否、ネット・電源の利用に制約を感じることが多いかと思います。
青森県主催のハッカソンを開催した際は、青森市が所有する文化観光交流施設「ねぶたの家 ワ・ラッセ」を活用しました。ここは県主催のITイベントでよく活用しており、セミナーなども開催しやすい場所となっています。ネットが利用者には原則非公開なので、モバイルルーターなどの持ち込みが必須です。青森駅前なので、公共交通で来場する人には便利です。駐車場に不便を感じる声も聴きますが、近隣の有料駐車場などを使うなどの対策が可能です。
もうひとつは、自治体が産業育成のために所有している施設のイベントスペースを活用するケースです。
岐阜県大垣市にある「ソフトピアジャパン」の「ドリームコア」や、札幌市の「インタークロス・クリエイティブ・センター」、大阪市の「大阪イノベーションハブ」、福岡県が運営する「福岡県Ruby・コンテンツセンター」などがこれに当たります。
ユニークな施設だと、秋田県の五城目町が運営する「五城目町地域活性化支援センター」があります。こちらはかつて小学校だったいわゆる廃校で、築十数年の美しい木造校舎がインキュベート施設に生まれ変わった場所です。
いずれの施設も、施設を利用できる対象者が、入居企業、会員企業など、一定の条件が必要です。また、単なる場所貸しをしている施設ではないので、開催趣旨と施設が掲げる利用目的に合致している必要があるほか、これら施設にも共催などに入っていただくなど、場づくりに向けた協力体制が組めることが重要です。
自治体の事業で開催する場合や、地元の公的団体と組んで開催するなどの場合は、こうした施設は利用しやすいでしょう。
(2) 貸会議室などの民間の施設
こちらについては、利用料さえ支払えば、利用に関する資格は特段、問われません。会場設営なども会場側で動いてくれるほか、水やお茶程度なら、サービスで出してくれるので、運営は楽です。青森県で開催したときは、宿泊付で温泉旅館の会場を利用したこともありました。
ネックになるのは料金です。相手は会場を貸すビジネスをしているわけなので、それなりの料金がかかります。プロジェクタなどの付帯設備の使用料も、それなりに高額であるケースもあります。
また、施設によっては飲食をする場合は、施設が指定する業者以外の利用がNGだったりするので、ケータリングなどで軽食を手配する場合は注意が必要です。
(3) 自社の会議室やホールを提供してくれる企業
大きな会議室やホールを所有している企業には、IT系のオープンな活動に協力的なところもあるでしょう。もしくは、コワーキングスペースなどで、開催に協力してくれるところもあるでしょう。
企業の会議室などを借りる場合は、あくまで先方の好意のもとなので、使用ルールの確認と徹底に注意しましょう。土日はビルのセキュリティが働き、入退場に制約があるケースもあるので、人の出入りに対応できるようスタッフを多めに配置するなどの対応も必要になります。
(4) 大学や専門学校など
学校が会場を提供してくれることもあります。
国際ゲーム開発者協会東北(IGDA東北)が手掛けているゲーム開発イベント「GameJam」では、郡山の「専門学校 国際情報工科大学校」、仙台の「専門学校デジタルアーツ仙台」、青森の「青森大学」などが会場となっています。
石巻の一般社団法人イトナブは、毎年夏に「宮城県石巻工業高校」で「石巻ハッカソン」を開催し、全国から70名ほどのエンジニアが集結します。
青森では、県主催のハッカソンも「青森公立大学」で2回、開催をしました。
SPAJAM2015の仙台予選は、東北大学の「カタールサイエンスキャンパス」のホールをお借りしました。
学校を使う場合は、公的な取り組みであったり、学校の生徒に有益なイベントであったり、学校側に、会場を貸し出す大義名分やわかりやすいメリットを提示する必要があります。
2.会場のキャパ
当然、参加人数に見合った広さの会場を見つけられるかがポイントになります。定員を決める際に、椅子・テーブルの数がどこまで対応可能なのか、会場側に問い合わせをしておくとよいでしょう。
有料の施設を使う場合、広いほうが料金は高くなります。また、大きな会議室を、間仕切りで分けて貸し出しているケースもあります。そうした部屋を使う場合、音響が使えない(=つなげて広い部屋にしたときにしか使えない)ことが多いので、マイクを使いたいときは要確認です。
3.夜の使用をどうするか
ハッカソンでは、参加者が深夜の作業場を望むことがあります。しかし、深夜も利用できる会場は、ほとんどありません。大学などで融通が利くところが、ごくまれに対応してくれることもありますが、基本的には厳しいでしょう。
ほとんどが、自宅やホテルなどを、参加者に自力で手配してもらうことになると思います。若い参加者だと、インターネットカフェやカラオケボックスなどで徹夜をする人もいるようです。
一方、ソフトピアや青森公立大学など、宿泊施設を併設しているところもあります。もしくは、前述の青森の例や、山形で開催してきたおこしソン、あるいは、みやぎモバイルビジネス研究会がHONDAと組んで鳴子温泉の旅館で開催をしたハッカソンなどのように、旅館を会場にするという方法もあります。
こうして宿泊込みの企画にして、宿泊棟を夜間の会場にすることで、対応が可能となります。
ただし、宿泊のコストや、参加者の宿泊の有無の管理など、参加者、運営者ともに負担があがるので、ここは企画次第ということになります。
4.インターネットの配備
自治体が産業育成のために所有している施設のイベントスペースであれば、完備しているところが多いです。しかし、そうでない場所だと、まだまだ普及していないのが現状でしょう。仙台市の施設では、市民向けの施設でも「戦災復興記念館」が無線LANを利用者向けに提供していますが、これは珍しいケースです。
なので、多くの会場では、自前で用意する必要があります。参加者にモバイルルーターを持参してもらうか、運営側でモバイルルーターを数台用意するか、あるいは、イベント向けに公衆無線LANを配備してくれる業者もあるので、そうしたサービスを有償で利用するか。コストに見合った負担で収めていけばよいと思います。
5.プロジェクタなどの付帯設備
プロジェクタは多くの施設で常設しているので、プロジェクタの有無で困るケースは少ないと思います。が、ケーブルがVGAのみという会場も多いので、HDMIを使いたいとか、Macを使いたいなどの場合、コネクタを自前で用意する必要があります。
スマホアプリ開発者の育成に力を入れてきた岐阜県のソフトピアは、MacやiPhoneでの接続を前提としているので、コネクタ類は会場側で用意されています。
市民向けに貸し出しをしている施設でも、「秋田市にぎわい交流館AU(あう)」は、Mac用のコネクタを会場側で持っています。これはかなり珍しいケースでしょう。
古い施設の場合、プロジェクタも古いがために、光量が少なく、見えづらいということもあるので、若干、注意が必要です。公的な施設の場合、管理を担当する職員が、こうした機器に疎いこともあるので、自力での対応が必要なこともあります。
付帯設備についても、自治体が産業育成のために所有している施設のイベントスペースが、一番充実しているなというのが実感です。
音響についても、ソフトピアはミキサーも完備しているので、マイクはもちろんのこと、パソコンの音を流すなども自由に行えます。札幌の「インタークロス・クリエイティブ・センター」は、スクリーンへの投影がHDMI接続なので、対応しているパソコンなら音の対応も大丈夫です。
6.飲食をどうするか
飲食を禁止している会場も多いので、茶菓の提供や交流会の開催を会場内で行いたい場合は、事前確認をしておきましょう。市民向けに貸し出しをしている
施設は、大半がNGです。前述のとおり、民間の貸会議室の場合は、専属の業者からしか食事を頼めなかったりもします。飲食で融通が利く施設は、意外と少ないです。
前述の「五城目町地域活性化支援センター」は、もともと小学校だったので、給食室だった部屋を調理場として使うことができます。
ここでハッカソンをやるときは、郷土料理のだまこ鍋を作ったり、町長が地酒の蔵元なので、日本酒を振る舞ったり、地場の飲食も堪能しつつ、交流を楽しむことができます。ここも自治体が産業育成のために所有している施設になるので、インターネットも使える上、夜もある程度、融通が利くので、田舎を楽
しみつつ、イベント会場しての利便性も高い、珍しい施設です。
飲食の手配の仕方については、また別の記事で紹介したいと思います。