おっさんは不機嫌な生き物だ

January 6, 2017


たとえば電車の中で若い人を怒鳴り散らすおじいさん。
何かあるたびに「おれは聞いてないぞ」とヘソを曲げる上司。
理不尽な難癖をつけて店のスタッフに絡む客。

 

おっさんは、いつでもどこでも不機嫌だ。

 

暴走老人という言葉がネットに賑わせた。

老人に限らず、40、50代から不機嫌をまき散らすおっさんがいる。

 

この不機嫌でかわいそうなおっさんは、どのようにして生まれるのか。

 

 

おっさんになると、新たに見聞きする情報を、過去の経験・思考の蓄積を基に、条件反射的に処理できるようになる。でも、土台が過去の蓄積であるが故に、新しい価値観や、整合されていないあいまいなものは承認できない。

 

過去の経験・思考が蓄積された状態だと、その蓄積だけできれいに整合された価値観が固定化され、視点の切り替えが難しくなるほか、きれいに整合された世界じゃないと居心地が悪くなり、それをかき乱しかねない情報には、基本、ネガティブに反応したくなる。

 

歳を重ねると、感情の抑制が利かなくなる。
脳の老化によるものだそうで、認知症でも見られる症状なんだとか。


(参照)脳の老化防止:40歳を過ぎると脳が老化。スマホ漬け、ときめきなし、ワンパターン人間は要注意

(参照)「年を取ると人間丸くなる」はずが......。怒りっぽくなるのも認知症の症状

 

その結果、おっさんになると羞恥心だとか、他人への遠慮とかのタガが外れやすくなってくるので、若いころは控えていたであろうネガティブやキツめな言葉も、割と簡単に吐くようになる。

 

若い人の発言なんかに対して、矛盾やあいまいさをちまちま突っ込むようなリアクションばっかりになってしまう。そんなリアクションだれも求めてないし、実際必要でもないのに。でも、自分の中にしまっておけない悲哀みたいなのもある。

 

 

こらえ性がなくなるとはどういうことか。若い頃から知らず知らずのうちに我慢してたり、飲み込んできてたりしたもので、それをしまっておく器みないなのが、いっぱいになっちゃってて、それ以上、飲み込めなくなる。

 

これまで理性で封じ込めてきたはずの鬱積した何かを抑えきれなくなり、ところかまわず怒ったり、怒鳴ったり。さらには、表情で自分を表現してこなかったので、普通にしててもどこか怒っているような顔つきにもなる。

もう感情がネガティブに動くたびに、自分の中にしまっておけずに、吐き出してしまう。

 

で、たとえばソーシャルで人の発言を条件反射的にちくちくとやってしまったりもする。自分の価値観にあわないもの=自分を攻撃するものに映ってしまうので、自分の正義をふりかざすことで、自分を守る。怒り散らすおっさんの心の中は、要は臆病の塊なのだ。

 

 

過去の経験・思考の蓄積で、自動的に物事を判断できるのは、年の功と呼ぶものに当てはまるのだろう。だが、変化の激しい時代においては、年の功は、「功」となりにくいのかもしれない。年の取り方の難しい時代だと思う。

 

これがソーシャル上でのやりとりに現れるだけなら、まだ「めんどくさいおっさんですね」で済むだけマシで、組織の上下関係でのコミュニケーションに出てきちゃうと、その組織は一気に硬直化する。

 

 

組織の中でおっさんが過去の経験・思考の蓄積だけで物事を判断するようになると、部下は、そのおっさんが内側に隠し持つ100点満点の模範解答がどこにあるのかを探りにいく。結果、そのおっさんの過去の経験・思考の蓄積の枠を超えるものは出てこない。

 

おっさんが若い人に向かって「若い柔軟な頭で自由に発想しろ!」と訴えても、おっさんの判断基準がそうなっていなければ、若い人は、柔軟な頭で自由に発想なんかしない。だれもムダなことはしたくないわけで。

 

価値観がゆらがない時代なら、おっさんの蓄積は財産だったけど、逆に作用するケースも多そうで、そういう意味ではおっさん受難の時代でもあるように思う。過去の蓄積が絶えずムダになる危険性をはらんでいる社会では、おっさんは昔以上に不機嫌に過ごさねばならない。

 

 

40過ぎたくらいから、自分の中にもそうした不機嫌なおっさんが顔を出しつつあるのを感じる。

 

これは、その域に達したおっさんにしかわからないことなのかもしれない。自分にその傾向がうっすら見えたことで、初めて「ああ、おっさんはこうやって不寛容になっていくのか」と気付かされる。

 

世にあふれるおっさんの多くは、ありのままをさらすことで浄化される女性にはなれないし、なんでも許せる聖人君子もなれない。常に中途半端な寂しさの中にあり、その寂しさを他人に説明する術を持たないまま、湧き上がる不機嫌をエネルギーに変え、今日もだれかに当たり散らすのだ。

 

新しい感性、新しい表現を楽しむ術をどこかで身につけて、おっさんは明るい未来を獲得しないといけない。おっさんにできる社会貢献と自己の幸福実現の両立は、そこにあるような気がする。

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